清宮書房

人生の大半を過ごしたとも言える昭和を自分なりに再検討し、今を見てみようとする試みです。

自費出版「書棚から顧みる昭和」のその後

毛利和子「日中漂流・グローバル・パワーはどこへ向かうのか」を読んで

毛利和子「日中漂流・グローバル・パワーはどこへ向かうのか」を読んで はじめに 表題の日中漂流もさることながら、世界中で国家の漂流が始ったかの印象を私は持っているのですが、如何でしょうか。今回、取り上げた本書は11年前に毛利和子氏が著わした「日中関…

阿賀佐圭子「柳原白蓮 燁子の生涯」を読んで

阿賀佐圭子「柳原白蓮 燁子の生涯」を読んで はじめに 「東京や横浜や神戸等の開港地から始った文明開花の波は、東京の日比谷の一角にも確実に押し寄せていた。」(6頁) と印象深い冒頭から本書が始ります。 安政5年(1858)、江戸幕府が締結した日米修好通商…

佐伯啓思著『「アメリカニズム」の終焉』を読み終わって・・(下)

佐伯啓思著『「アメリカニズム」の終焉』を読み終わって・・(下) その3 アメリカニズムの終焉 戦後の冷戦体制のもと、圧倒的な経済と戦力でアメリカが自由世の守護者になったこと。もうひとつは大量生産と大量消費という「モノのデモクラシー」をいち早く実現…

佐伯啓思著『「アメリカニズム」の終焉』を読み終わって・・(上)

佐伯啓思著『「アメリカニズム」の終焉』を読み終わって・・(上) 今回の拙稿にあたって 毎回のことですが、何故このような投稿を続けているのか、とのご批判もあろうと思います。著名の方々の作品とはいえ、ただ、その文章を引用、紹介する意図は何なのか。まさし…

佐伯啓思著「反・民主主義論」他を読んで思うこと

佐伯啓思著「反・民主主義論」他を読んで思うこと 投稿にあたって 確かに異質とも言えるトランプ大統領の出現は日本を含め、今後の世界情勢に大きな影響を与えることは事実でしょう。加えるなら第一次世界大戦以降、連綿と続けてきたアメリカの歴史観にも影響…

三谷太一郎著「戦後民主主義をどう生きるか」、並びに五百旗頭真・中西寛編「高坂正尭と戦後日本」他を読んで思うこと

序章 日本を取り巻く現国際状況 イスラム国の出現、テロの続出に加え、英国のEU離脱国民投票結果で首相交替、イタリア憲法改正反対での首相交替、アメリカ次期大統領トランプの出現、フランス、ドイツの首脳交代の可能性等々と欧州、アメリカが近来にない激…

堀田江理「1941 決意なき開戦」を読んで

堀田江理著「1941 決意なき開戦」を読んで はじめに テレビ等で報道される街の人の主語が「私」でなく、「国民」としてとか、「都民」としてと、話されることに私は違和感を持っていると記していました。偶々、1991年に逝去された山本七平の「戦争責任は何…

塚本哲也著「我が家の昭和平成史を」を読み終わって

はじめに 本書は毎日新聞のウイーン特派員、プラハ支局長、ボン支局長、論説委員等を経へた後、防衛大教授さらには東洋英和女学院大学学長をも勤められた塚本哲也氏による、家族の平成昭和の記録です。一巻、二巻からなる長編記録ですが氏の文章力のなせる技…

日本の愛国心

佐伯啓思著「日本の愛国心 序説的考察」等を読み通して はじめに 舛添知事の辞任に関する一連のテレビを中心とした報道に皆さんはどう思われますか。私は、またも始まったという実に不快な思いを禁じ得ません。 なにも舛添元知事を応援するということではあり…

安全保障関連法案の施行について思うこと

はじめに 昨年9月に成立した安全保障関連法は先月27日施行されました。今回はその関連法案に関し3月16日から18日に亘り、日本経済新聞の経済教室「動き出す安保関連法」に三人の学者が興味深い見解を載せています。今回はその紙面他を改めて紹介するとともに…

日米安全保障条約と戦後政治外交

原彬久著「戦後政治の証言者たち」、服部龍二「外交ドキュメント 歴史認識」他を読み通して・・【前編】 はじめに 民主党と維新の党が自公政権の交代を図るべく双方解党し、新しい政党を作るとのこと。その意図は分かるとしても果してどんな成果を望むのでし…

植民地時代から今日まで  エドウィン・S・ガウスタッド・・後編

「アメリカの政教分離」エドウィン・S・ガウスタッド 西直樹訳(みすず書房)を顧みて・・【後編】 第三章19世紀 静かなる法廷 信教の自由を与えられた宗教団体はこの世紀に劇的な繁栄を迎えます。例えばメゾジスとバプティストの教会数は会衆派と監督教会…

植民地時代から今日まで エドウィン・S・ガウスタッド著 大西直樹訳(みすず書房)を顧みて・・【前編】

はじめに 昨年9月、中国に関するある意味では衝撃的な二つの著書が発刊されました。ひとつは習近平の生い立ちと、凄まじい共産党内部の権力闘争の報告書でもある中澤克二著「習近平の権力闘争」です。もうひとつは中国の国家戦略の根底にある意図を見抜くこ…

「アメリカは忘れない・・記憶のなかのパールハーバー 」(法政大学出版局)       エミリー・S.ローゼンバーグ 訳飯倉章を再読して

はじめに 今年の10月、加藤典洋著「戦後入門」が発刊されました。新書版としては635頁に亘る異例の分厚いものです。中身の濃い、いわば研究書・論文の発表といったものです。何故に広島、長崎への原爆投下であったのか、更には現日本国憲法への視点・観点に…

昭和天皇について思う

昭和天皇について思う【後編】 2 章 山本七平「裕仁天皇の昭和史」 山本七平は「山本学」とも評される、独自の世界を築いてきた方ですが、一時は保守反動の元凶ともいわれておりました。現在でもそうした評価かもしれません。ご承知のように同氏は戦時中、…

昭和天皇について思う

昭和天皇について思う【前編】 はじめに 高齢になられた現天皇陛下並びに皇后陛下の後、天皇家はどのような状況になるのか私としては一抹の不安を覚えています。現天皇並びに皇后陛下は皇太子時代から昭和天皇への正に贖罪の道を歩んでこられた心象を私は思…

筒井清忠「近衛文麿 教養主義的ポピュリストの悲劇」他への覚書 【後編】

著者の筒井清忠氏は1948年生まれ、京大文学部卒後、京大教授を経て現在は帝京大学教授で、日本近現代史・歴史社会学・日本文化論を専門とする学者です。 本書は、「近衛文麿の悲劇とは何か」から始まり、「誕生と学習院」、「一高と教養主義」、「英米本位の…

筒井清忠「近衛文麿」 教養主義的ポピュリストの悲劇(岩波現代文庫)他への覚書 【前編】

はじめに ここ数ヶ月に亘り安全保障関連法案の国会審議等、今日的問題について私の日頃の想いなどを吉野源三郎「君たちはどう生きるか」にも触れながら報告してきました。加えて、服部龍二氏の「広田弘毅・・悲劇の宰相の実像」、山本七平「裕仁天皇の昭和史…

ズビグニュー・ブレジンスキー著「ブッシュが壊したアメリカ」を思い起こして・・【後編】

第三章・「先代ブッシュの負の遺産」(湾岸戦争の勝利の立役者が残した禍根)では、先代ブッシュの任期はユーラシア大陸の激動期にぴったりと重なっていること。有能な外交官でもあり、又勇敢な戦士でもあったが、先見のないリーダーであったと分析していま…

ズビグニュー・ブレジンスキー著「ブッシュが壊したアメリカ」を思い起こして・・【前編】

はじめに 日本政治が右傾化し、自由と民主主義が壊れていくかのような巷の声もあり、中野晃一著「右傾化する日本政治」(岩波新書)を一読しました。著者は1970年生まれの比較政治学、日本政治、政治思想を専門とする学者との紹介ですが、私は初めて氏の著書に…

安全保障関連法案に関連して

前月の7月13、20日に「世相に想う」ということで、上記「安全保障関連法案に関連して」との駄文を載せました。現国会で本法案が審議されているからでしょうか、いつもより多くの感想を皆様から頂きました。 高校時代からの畏友による、理路整然とした6項に纏め…

安全保障関連法案に関連して【 後編 】

服部龍二著「広田弘毅」 我々が今なお、今次大戦を問い続け、否問い続けざるをえない中にあって、本書は何故に日本が太平洋戦争に突入し、そして敗戦に至ったのか。世論を作り出す、そのときの言論機関・マスコミはどうであったのか。そういった諸々の歴史経過…

安全保障関連法案に関連して【 前編 】

服部龍二著「広田弘毅・・悲劇の宰相の実像」(中公新書)他への雑感 今国会で大幅に会期を延長しているものの、安全保障関連保障法案の国会質疑は大きく変貌している地政学的変動とも言うべき現実を軽視した、またもや神学論争に陥ってきた感を否めません。…

今週のお題「私がブログを始めたきっかけ」

昨年の4月、「書棚から顧みる昭和」を自費出版しました。友人4人が発起人となり内幸町で出版記念の会を開いてくれたこともあり、友人・知己から身にあまる高評を頂きました。また出版に当たり引用させて頂いた月刊誌[選択]、拓殖大学海外事情研究所、更に…

「戦艦大和の最後」の吉田満を巡って・・その3 

はじめに 現役を離れて数年が経ち、改めて自らの生き方というか、在り方に大きな影響を与えた四人を此処にあげてみました。 先ず学生時代に鮮烈な印象を与えた むのたけじ。元朝日新聞社の記者で終戦後、戦時中の自らの記者としての責任をとり、更には報道機…

「戦艦大和の最後」の吉田満を巡って その2

前回、粕谷一希著「鎮魂 吉田満とその時代」の中で、吉田満が学生時代に東大法律学科の親友である和田良一氏と交わされた書簡のことも紹介いたしました。偶々、昨年(平成17年)12月にその良一氏のご子息の和田一郎弁護士とお会いする機会ができ、改めて吉田…

「戦艦大和の最後」の吉田満を巡って・・その1

はじめに 昨年(2014年)の年末のことですが、久しぶりに自宅の襖、障子張替えを本職に頼まざるを得ず、近所の表具屋さんに来てもらいました。今まで近所に住みながら初めてお会いする田所義行氏です。最近になり海底に沈んだ戦艦武蔵の映像が放映されておりま…

杉本信行「大地の咆哮・・元上海総領事が見た中国」を再読して

はじめに 本書は今から9年前の2006年7月に発刊されました。著者の杉本信行氏は、一部のマスコミで叩かれた外務省の所謂「チャイナスクール」の外交官の一人でした。 2004年春、上海総領事館員が中国公安部より強迫され、「このままでは国を売らない限り出国…

多田井喜生著「昭和の迷走 第二満州国に憑かれて」を読み通して

はじめに 雑感 著者は1939年生まれで日本不動産銀行(日本債券信用金庫)、日本総研を経て退職され、「朝鮮銀行史」を含め数多くの著作を出されています。本書は2014年11月に発刊されました。大陸計略の黒幕であるという勝田主計蔵相の日記等の一次資料を長…

日韓、日中の関係(相互の嫌悪感)・・・地政学的な危機(その2)

三谷太一郎著「人は時代といかに向き合うか」に立ち返って 日本の現状及びその先行きに、言い知れぬ不安を感じているなか、三谷太一郎著「人は時代といかに向き合うか」に巡りあいました。著者は1936年生まれの政治史学者であり、近代史家の重鎮です。今まで…

日韓、日中の関係(相互の嫌悪感)・・・地政学的な危機(その1)

はじめに ここ数ヶ月の現象として、マスメディアを中心に「戦後70年」をことさら意味深いが如く取り上げられています。その観点は何なのでしょうか。何処に視点を当てようとしているのでしょうか。私は違和感を覚えています。 20世紀が戦争の時代とするなら…

自費出版「書棚から顧みる昭和」(言の栞舎)のその後

はじめに 平成26年4月、「書棚から顧みる昭和」(言の栞舎)の自費出版の後、お読み頂いた諸先輩、友人達からは身にあまる好評、多くの方々からも相応の反応を頂きました。また、資料として参考にさせて頂いた月刊誌「選択」、拓殖大学海外事情研究所にも、恥…

イアン・ブルマ「廃墟の零年 1945」(訳 三浦元博・軍司泰史 白水社)を読んで

勘違いされる方はいないと思いますが、著者は1951年、オランダ生まれのアジア研究者です。「Gゼロ後の世界」を著したイアン・ブレマー氏ではありません。 偶々、日経紙上で掲題本書の書評を見、一読いたしました。私にとっては、やや期待外れの感もありますが…

木村幹著「日韓歴史認識問題とは何か・・歴史教科書・『慰安婦』、ポピュリズム]

はじめに 昨年、拙著「書棚から顧みる昭和」の最終章「靖国参拝問題について思う」の中で、韓国との関係については別の機会に改めて触れたいと記しました。 韓国人の友人も居り、又仕事の関係で度々、韓国を訪れてはいましたが、韓国への知識は少なく、何か…

澤田克己著「韓国『反日』の真相」(文春新書)を読んで

はじめに 新聞報道によれば、今月の3月2日付で外務省は韓国を紹介するホームページ上の記述を更新し、「基本的価値を共有する」との文言を削除したとの報道。即ち、韓国との2国間関係を紹介する項目で「我国と、自由と民主主義、市場経済等の基本的価値を共…