清宮書房

人生の大半を過ごしたとも言える昭和を自分なりに再検討し、今を見てみようとする試みです。

姜尚中「朝鮮半島と日本の未来」他を読んでみて

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姜尚中朝鮮半島と日本の未来」他を読んでみて

 

はじめに

 

 今日8月15日は終戦(敗戦)記念日です。75年前の当時も、とても暑い日でした。東京大空襲の中、本所小梅の隅田川の側、燃え落ちる横川橋の袂で、私達6人家族を含め数家族が奇跡的に生き延びました。焼け出され、被災を逃れた東京向島の叔母の家で、8月15日、あの異様な沈黙の中、親戚の人たち、母、姉、5歳の私には意味は全く分かりませんが、玉音放送をかしこまって聞いたわけです。そうした私の思いで他は今年3月4日、弊ブログ「淸宮書房」の投稿、加藤陽子著「天皇と軍隊の近代史」の中でも、触れております。

 

 方や、ブログ「淸宮書房」の最初の投稿は2015年3月の澤田克己著「韓国『反日』の真相」を読んで、でした。続いて、木村幹著「日韓歴史認識問題とは何か・・歴史教科書・慰安婦ポピュリズム」、同年4月「日韓、日中の関係(相互の嫌悪感)」(その1、その2)、という流れで投稿しております。加えて、その後、それぞれの投稿に加筆しており、結果的には日韓に関しては、2019年2月18日までに9回の投稿となりました。私としても中国共産党独裁政権の動向と共に、半島国家と我国との関係、その在り方には大きな関心と同時に大きな危険性、危うさを痛感しております。

 

 そうした中、2019年11月に李栄薫編「反日種族主義」の日本版が出版され、同書に久保田るり子氏の解説、「反日種族主義が問いかける憂国」が記されております。更に、2020年4月、その副読本として久保田るり子著「反日種族主義と日本人」が出版されました。

 久保田氏によれば「最大のタブーである『反日批判』に真っ向から挑戦した『反日種族主義』と言う本の登場は、韓国社会に大きな衝撃を与えた。2019年7月に出版された同書は韓国でベストセラーとなったが、李栄薫氏をはじめとする執筆グループや彼らを支える支援者達の闘いは始まったばかりで、むしろこれからがより茨の道になるだろう。」(「反日種族主義と日本人」 3頁)とその「まえがき」で記しております。

 

 私としては現在の日韓関係にあって、「反日種族主義」という著作が韓国でベストセラーになったことは、本当だろうか、と少し疑問を持つところですが、どのような観点からベストセラーになったのか知りたいところです。

 

 加えて、偶然でしょうか、2020年5月、姜尚中著「朝鮮半島と日本の未来」が出版されました。氏は2003年5月にも「日朝関係の克服」を発刊されておりますが、私の過去のブログ投稿も再検討しながら、姜尚中氏の著作を中心に私の感想など以下、記して行きたいと思います。

                                                                                 (2020年8月15日)

 

姜尚中著「朝鮮半島と日本の未来」他を読んでみて

 

 私は姜尚中氏については詳しくは知りません。政治学者、東大名誉教授として、テレビ等にも頻繁に登場され、物静かに語る姿を拝見しております。方や、何故に氏がメデイアに頻繁に登場するのかと疑問にも思うところです。僭越至極ですが私は氏の見解にはなじめず、共感を持つには到りません。尚、氏の著作は「反ナショナリズム」「悩む力」「姜尚中に聞いてみた」「日朝関係の克服」他、数少ないですが読んできておりまが、いつも何か釈然としない感情が私に残るのです。今回、その釈然としない理由が上掲の本書を読むことにより、分かったようにも思いました。本書の「まえがき」等で、次のように記されております。

 

 2003年に上梓した「日朝関係の克服」は日朝平壌宣言に触発されて書き下ろした、50代前半における勝負作であった。本書もまた、私にとっての勝負作である。だが、前回と違い、今回は、ある種の諦念と折り合いをつけながらの作業であったように思う。私はもう南北朝鮮の統一を見届けることはないのだ。・・(中略)現在、日朝関係は戦後最悪と言われる刺々しい雰囲気が漂い、南北関係も米朝関係も停滞したまま、新たな天望が見いだし難い状況に陥っている.・・(中略)コロナウイルスの大流行により、・・(中略)地球を舐め尽すような災禍の猖獗は、地上の誰もが犠牲者になる可能性を孕んでいる分、かえって国や体制の違いを超えた協力の動きを加速させるかもしれない。もちろん、逆に不安と恐怖に駆動されて、敵対と排斥へと向かう可能性もないわけではない。「連帯」と「新たな壁」は、コインの裏表の関係にある。それでも、私は前者の可能性を信じ、朝鮮半島と日本の未来の姿を多くの人と共有すべく、今回の執筆に臨んだ。(4頁)

 

 果たして本書がそのような連帯、願い、絶望の中に希望の基点となるでしょうか。私は本書を読むことにより、逆に日韓関係の改善は、むしろ世紀を超える、否、解決できない問題なのだなと、残念ながら本書を読んで感じる次第です。

 本書の構成は、序章・危機には変化が必要だ、第一章・なぜ北朝鮮は崩壊しなかったのか、第二章・南北融和と「逆コース」の30年、第三章・「戦後最悪の日韓関係」への道筋、第四章・コリアン・エンドゲームの始まり、終章・朝鮮半島と日本の未来、という構成です。今回も其の全てを紹介するのではなく、私が疑問点を抱いた箇所等を記して参ります。僭越至極な私の感想・言い方も多々あること、重々承知しております。

 

 本書の序章で氏の基本的な観点が記されております。即ち、2017年5月に発足した文在寅政権と安倍政権で日韓関係が深刻になったとの認識です。果たして、そうでしょうか。私は疑問を持つところです。

 

 韓国より一方的に反故にされた従軍慰安婦合意、2018年の韓国大法院による元徴用工判決、其の12月には日本海能登半島沖での韓国海軍・駆逐艦による海上自衛隊の哨戒機への火器管制レーダーの照射事件。2019年8月、日本が韓国を輸出管理の優遇措置対象国から除外。続いて、日韓の軍事情報包括保護協定の自然延長のペンデイングを韓国が行ったこと。こうした中、日本でも韓国とは「断交だ」「伐つべし」との主張まで飛び出す一方、韓国では日曜雑貨から自動車にまで到る不買運動がうねり、日本への渡航自粛の波が広がった、と氏は記しています。

 

 尚、上記の中では至極当然とも見える文言で「従軍慰安婦」、「元徴用工問題」としていますが、李承晩学堂の校長である李栄薫編「反日種族主義」の中では全くその様相が異なります。即ち、そんな従軍慰安婦についても姓奴隷というような事実はなかったと記されています。私はここでどちらが正しいかを問うのではなく、姜尚中氏は「従軍慰安婦」、「元徴用工問題」は既成の完全な事実として記していることに、僭越至極ながら氏に対し、言いしれぬ疑問を感じるのです。

 

 尚、本書に中には参考見解として、度々取り上げられる歴史学者との表現で和田春樹氏の見解が取り上げられ、参考文献としても同氏の4冊の著作を示します。方や、日韓の歴史認識問題他、営々と研究されている専門家・研究者の木村幹氏、細谷雄一氏、田中明氏、鄭大均氏、呉善花氏他の学者の言説には一切触れられておりません。私は奇妙と言うか不思議さを感じるのです。

 

 その一例ですが、木村幹氏によれば、「日本支配の悪しき部分を示す象徴的な事例として挙げられる従軍慰安婦問題も1980年以前の韓国においては、この問題が本格的に取り上げられことはほとんどなかった。また、80年代以前においては、今日我々が用いている「歴史認識問題」や「歴史問題」という言葉が用いられることもきわめて少なかった.・・(中略)同じことは歴史教科書問題についても言うことができる。東アジアにおいて初めて歴史教科書問題が本格的な国際問題として挙論されたのは、1982年のことである。」(木村幹「日韓歴史認識問題とは何か」、17頁)と記しております。

 

 慰安婦問題も1991年の自民党政権ではリベラルと言われる宮沢政権、更には1994年の旧社会党の党首であった村山政権時代に彷彿してきたのが現実です。何が韓国で起こったのでしょうか。姜尚中氏によれば現文在寅政権の取り組み方に問題があったとしても、「日本に現代版の中曽根政権や小泉政権があれば、韓国の出番はなかったかもしれない。それほど北東アジアの新しい秩序形成の勢力地図で日本の位置は低下していたのである。」(「朝鮮半島と日本の未来」162頁)と記されております。皆さん、如何思われますか。私は僭越ながら賛同致しかねます。

 

 そんな思いを抱きながら、李栄薫編「反日種族主義」、及び久保田るり子著「反日種族主義と日本人」と並行しながら、本書の姜尚中著「朝鮮半島と日本の未来」を読み進めた次第です。僭越至極ですが姜尚中氏のような認識が韓国で浸透しているのでは、日韓関係の改善は到底無理、世紀を超えても解決不可能ではないかと思うのです。以下、私が感じる疑問点など、幾つか記して参ります。

 

 その1 日韓関係が戦後最悪になった要因

 

 誤解を恐れずに氏の視点を紹介すると、

 

 まず一つは戦後最悪の日韓関係は朝鮮半島分断体制の「終わりの始まり」と言う大きな時代の流れの中で起きていること。2018年平昌オリンピック以降、ポスト分断体制への移行が始まりつつあること。文在寅政権の対北朝鮮政策は金大中政権の「太陽政策」、盧泰愚政権の「北方政策」に続く、謂わば30年の歴史的必然性であること。方や、日本はこれまでの分断体制の恒久的な存続を死活的利益とし、「現状維持」を安全保障上の基本的な戦略としていること。

 

 その二は日韓の間の国力の差が縮まり、韓国が経済発展よりも歴史問題が優先される課題となったこと。

 

 その三は日韓のナショナル・アイデンティティの衝突に到ったこと。「日本にとって明治以降の歴史は、近代化を成し遂げ、列強に伍する位置まで上り詰めた輝かしさに満ちている。しかし、その光り輝く日本の近代は膨張主義という影と切り離すことはできない。その影の側面を最初に引き受けざるをえなかった地帯こそが朝鮮半島なのであり、韓国併合から110年、南北に分断されたまま、統一的なナショナル・アイデンティティも作り得ないまま、韓国は日本との過去の歴史認識をめぐって緊張を続けているのである.・・(中略)韓国にとっては、1919年の三・一独立運動に代表される日本の侵略に対する抵抗の歴史がアイデンティティの根源にあり、1945年8月15日は日本の植民地支配から解放された日である。」(27,28頁)

 

 加えて、上記の歴史認識と関係があるのか否かは判然としませんが、文在寅政権は1919年3月1日を建国記念日とする動きもあります。李承晩他が1919年3月1日、上海で大韓民国臨時政府を樹立したものの、その後は李承晩も離脱し細々と活動していたわけですが、国際的には国家として認知もされていないはずですが、そのようなことは問題外のことなのでしょうか。その後、アメリカの支援もある中、李承晩元大統領が1948年8月15日に国家樹立を宣言し、国際的にも認知されたわけです。そうした歴史事実は変わるのでしょうか。姜尚中氏によれば日本への抵抗の歴史認識は消えることはないのです。

 

 更に敷衍すれば、著者は1965年に妥結した日韓基本条約の 第二条の「1910年8月22日以前に大日本帝国大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される」。この「もはや」という曖昧な文言は日本による「韓国併合条約」は韓国では不法とし、現在まで両者の主張の違いは現在まで続いている。加えて、第三条の「大韓民国政府は、国際連合総会決議第195条明らかにされているとおり朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される」との韓国の解釈に対し、日本はこの条文を「韓国政府が休戦ラインより南側を実行的に管轄している事実を確認したものに過ぎない」とみなしている、と記しております。

 

 加えて、朝鮮戦争についても氏は言及されて行きますが、分断の怨念は戦争の当事者に向かわず日本にきているのです。その一つの理由は南北に分断され、戦争特需により日本は後の高度成長へ繋がった、その怨念はけっして解消することはなく、更なる反日教育によって強まるまる可能性が高いのではないでしょうか。私は呉善花著「侮日論 韓国人はなぜ日本を憎むのか」を想い起こすと共に、本書を読み進め、反日の怨念は今後も消えない、そんな思いが強まりました。

 

 日韓両国はきわめて解きがたい大きな溝を抱えており、それを埋めることはできないのではないでしょうか。姜尚中氏は日韓関係のリミット(限界)に付いても言及されております。

 

 その2 日韓関係四つのリミット(限界)

 

 第三章「戦後最悪の日韓関係」の中で、四つのリミット(限界)が記述されます。

 その一は、日韓の出生率低下による資産や所得、学歴や情報、文化の格差構造が固定化すると共に世代間格差の問題が浮上。韓国内ではその国内の不満の解消策として政府による過剰な「反日」に煽られた対日外交。それに対する日本は日本の中の「嫌韓」感情に便乗したような韓国に対する強硬姿勢。相互の妥協点を見いだせないほどにエスカレートしてしまいかねない。

 

 その二は、地球温暖化に代表される環境的リミット。福島第一原発事故の問題は日本列島と朝鮮半島が共に直面する課題で、今後も福島第一原発内の汚染水が海洋放出となれば、日韓の間の軋轢は再燃することになりかねないこと。

 

 その三は、地政学、・地理学的リミット。ユーラシア大陸の半島の先端に位置する韓国は、中国やロシアなどとの直接的な繋がりを断たれる一方、日本は冷戦のころまで、米国の覇権の下、全方位的通商国家として自由貿易の果実を得てきたこと。

 

 その四は、歴史認識のリミット。そのリミットが浮上したのは1980年初頭の教科書問題後のことであるとし、「韓国側から見ると、李氏朝鮮不平等条約で開国させた明治初期、さらには韓国併合に連なる日清・日露戦争は、慰安婦や徴用工を生む苦しい受難の時代の始まりを意味し、さらに韓国では南北分断を生んだ遠因を日本の植民地支配に求める見方が支配的だ。日本にとっての『栄光』の歴史と、韓国のとっての『屈辱』の歴史。」(104頁、)と記されております。 

   

 加えて既に記してはおり、繰り返しになりますが、1965年に妥結した日韓基本条約の第三条の解釈は「韓国では韓国政府こそ全朝鮮の唯一合法政府である」、と解釈しているに対し、日本は北朝鮮とも交渉する余地を残す為に「韓国政府が休戦ラインより南側を実行的に管轄している事実を確認したものに過ぎない」と見なしている。

 

 一方、木村幹著「日韓歴史認識問題とは何か」の中で、1982年初頭日本の歴史教科書の件に付き次のように記しております。私としてはきわめて重要な指摘と考えますので、長くなりますが以下、ご紹介致します。

 

 日韓両国の間で最初に日本の歴史教科書をめぐる本格的な紛争が発生したのは、1982年のことであり、これは動かしえないようもない事実である。だからこそ、我々はこの時期に集中して、何がどのようにして起こったのかを、時期を絞って分析することができる。・・(中略)1982年の教科書問題が、同年6月26日の日本のマスメディアによる「誤報」事件から始まったことはよく知られている。この日、日本のマスメディアは、既に紹介したような理由に基づく事実誤認から、文部省(当時)がこの時の検定において、実教出版の教科書における中国大陸への「侵略」という記述を、「進出」へと書き換えさせた等と報じることになった。これにより、教科書問題の火蓋が切られることになった。・・(中略)日韓間の歴史教科書問題を考える上で重要なのは、この家永第二次訴訟の最高裁判決が出たのが、1982年4月、つまり「誤報」事件が発生するわずか二ヶ月前のことだったことである。当然のことながら、この前後における日本の世論やマスメデイアの歴史教科書検定に対する関心は前例がないほどまでに高まっていた。結果として出された判決は、82年のこの時点では既に教科書執筆の基準となる学習指導要領が大きく書きかえられておてり、家永の訴えの利益は消滅したとして原判決の破棄、差し戻しとするもので、実質的な家永の敗訴だった。・・(中略)当時の世論では、家永に対しての同情的な声が強く、一部の人々は、文部省がこれにより検定を強めれば、そのことを新たな教科書検定反対運動の契機として利用できるはずだ、とさえ考えていた。だからこそ、とあるジャーナリストの基本的な情報確認の誤りにより生み出された単純な「誤報」は、瞬く間に大半の日本メデイアが共有するものとなった。つまりこの「誤報」は、当時の世論やマスメデイアの「期待」に意図せずして応えるものであり、それゆえに、人々に広く事実として信じられることとなったということができた。(本書75~79頁)

 

 続いて姜尚中氏は、米国が火をつけた「歴史戦」と記します。私としては火をつけたのが米国との記述には強い違和感を抱きます。加えて、カリフォルニア州選出の日系アメリカ人であるマイク・ホンダ下院議委員が2007年1月、「日本政府は慰安婦に謝罪すべき」という決議案が米国下院外交委員会に提出し、外交委員会並びに下院本会議でも可決。その流れはオランダ、カナダ、欧州議会等々に広がり、国際的な人権問題として捉えていった。と記して行きます。

 

 それは事実としても、姜尚中氏の生い立ちに関係はないでしょうが、マイク・ホンダ氏がことさら日系人であることに強調するように見えるのです。従い、日本人である著述家であった故吉田清治の事を私は思い起こすわけです。

 

 私の理解では、吉田清治は1982年頃から、済州島において自らが軍令に従い、若い200人ほどの朝鮮人女性を捕獲、拉致、強制連行したこと等を日本各地、更には韓国まで出向き講演し始めます。加えて、1983年には「私の戦争犯罪」を上梓し、1989年には韓国でも発刊されます。その上、朝日新聞が1983年以降、16回に亘り吉田清治叙述を報道し続けました。日本でもそれは大きな問題となり、学者の秦郁彦氏他の方々がその証言に疑問を持ち、現地調査の結果、それは事実ではないこと。加えて吉田清治も1995年、それは創作であることを表明。それから20数年経過した2014年8月5日、朝日新聞は、吉田証言は虚偽と判断し、吉田清治にかかわる記事をすべて取り消した現実です。

 

 方や、1992年韓国政府は吉田清治の著述を証拠として国連人権委員会に提出。1996年にはクマラスワミ国連人権委員会日帝下軍隊慰安婦の実態調査報告書でも証拠として取り上げられました。

 吉田清治とはいったい何者だったのでしょうか。私には彼の意図がなんであったのか分からないまま今日到っております。吉田清治には人には言えぬ極度のつらい人生経験があったのでしょうか。

 

 と同時にメデイアの危険性を改めて思うともに、戦中、戦後も変わらない朝日新聞の報道の在り方、更にはその朝日新聞の特殊の体質を私は感じるのです。世間では新聞離れが始まっておりますが、その前兆以前に、朝日新聞の購読部数が急速に減少しているのは何故なのか。戦中では朝日新聞は世論を戦争遂行へと煽り、戦後は韓国のみならず、日本にいる反日勢力に反日感情を増幅させるような報道を続ける、そんな印象を私は強く抱くのです。

 更に加えれば、報道の自由と共に報道しない自由も新聞社を含め、メデイアは持ってしまった。それを掣肘するものが無くなったしまった、と私は常々感じ、今までの投稿にも度々、記して来ました

 

 尚、姜尚中氏は本章の最後の方で次のように記されています。ナチスドイツのジェノサイド、ホロコーストを日本に想定するかの如く、「韓国内では日本に対してドイツ並みの過去の清算と謝罪、補償の要求が繰り返されてきた。ドイツのモデルは理想と見なされてきたのである。」(143頁)

 

 以上のような認識にあっては1948年から始まった李承晩政権の時代から続く日韓の関係を顧みると共に、2008年から始まった李明博、朴大統領、そして現文在寅大統領という政権交代の12年間の経緯に鑑みても、日韓関係が改善に向かうということは、私は到底考えられないのです。種々と経緯・事件はありますが「2015年の『外交青書』で『自由、民主主義、基本的人権などの基本的な価値と、地域の平和の安定の確保などの利益を共有る』という表現が削除され、単に『最も重要な隣国』とされるにとどまった。」(120頁)この推移は何も安倍政権が起こした問題ではなく、むしろ自然の推移の帰結ではないでしょうか。

 

 本書の終章の最後に姜尚中氏は以下のように記されます。

 

 古代史にまで遡れば、日本海に張り出した半島は、大陸の最先端文化の恵みを列島に滴らせる「乳房」のような存在であった。21世紀の新しい時代にふさわしい朝鮮半島と日本の未来は、悠久の歴史を刻んできた半島と列島の歴史を胸に刻み、共に北東アジアへ、さらにユーラシアへと協力して乗り出していくことではないか。パンデミックという禍は、その「啓示」となりうるかもしれない。(202頁)

 

 残念ながら、私にはそうしたことは虚ろに思うのです。この記述に対し、私は井上靖著の日本征服の野望を持つ元と、その兵站基地となった高麗の物語である「風濤」を想い起こすのです。朝鮮半島の悲惨な物語です。

 

 半島国家は大事な隣国ではありますが、戦後の半島国家と我国との経緯・経過を改めて再検討すると共に、このコロナ禍にあって、価値観を大きく異にする共産党独裁政権の中国の動向を見極め、我国は米国との関係をより強化すること。加えて、共通の価値観を持つオースラリア、ニュージーランド、インド等の諸国、更には英国とより深い関係を構築すること。そうした新たな道を築き挙げることが、より重要なのではないでしょうか。更に敷衍すれば、日本がかって統治した台湾及び台湾の人々とは戦後においても強い絆があります。日本が福島原発事故、東北大震災等々に際しては常に他国に先駆け、大きな支援をしてくれていること、そのことも我々は忘れてはなりません。

 

おわりにあたり

 

 僭越至極ですが、私の想いを中心に記して参りました。姜尚中の真意とは大きな異なり、私の勝手な思い込みもあるやもしれません。その一方、冒頭に示した李栄薫編「反日種族主義」、久保田るり子著「反日種族主義と日本人」にはほとんど触れずにきてしまいました。尚、編者であり執筆者の李栄薫氏はソウル大学において、韓国経済史研究で博士学位取得、退職後は李承晩学堂の校長をされております。加えて、金洛年氏他5名の執筆者も日帝下韓国経済史等の研究者であります。

 方や、久保田るり子氏は産経新聞編集委員でもありますが、韓国・延世大学にも留学された朝鮮半島情勢、及び東アジアの安全保障問題に造詣が深い方でもあります。是非、上の二著作も合わせお読みになることをお薦め致します。

 

  2020年8月27日

                          淸宮昌章

 

参考図書

 

 姜尚中朝鮮半島日本の未来」(集英社新書

 同  「日朝関係の克服」(同上)

 李栄薫編「反日種族主義「(文藝春秋

 久保田るり子反日種族主義と日本人」(文春新書)

 木村幹「日韓歴史認識問題とは何か」(ミネルヴァ書房

 同  「朝鮮半島をどう見るか」(集英社新書

 細谷雄一歴史認識とは何か」(新潮選書)

 呉善花侮日論」(文春新書)

 同  「反日・愛国の由来」(PHP新書

 田中明「韓国の民族意識と伝統」(岩波現代文庫

 同  「物語 韓国人」(文春新書)

 鄭大均「韓国のナショナリズム」(岩波現代文庫

 同  「在日韓国人の終焉」(文春新書)

 澤田克己「韓国『反日』の真相」(文春新書)

 同  「韓国大統領 文在寅とは何者か」(祥伝社

 井上靖「風濤」(新潮文庫

 淸宮書房の再・澤田克己著『韓国の『反日』の真相』他