清宮書房

人生の大半を過ごしたとも言える昭和を自分なりに再検討し、今を見てみようとする試みです。

三ヶ月が経って

三ヶ月が経って

f:id:kiyomiya-masaaki:20190328134401j:plain

はじめに

 

 ここのところ投稿のペースが落ち、月一回になっております。その落ちた要因は体調の為か、読書量が落ちたこと。加えて、取り上げた著書の内容が濃く、関連著書、更には、かって読み込んだ著書にも立ち返る必要があったこと、にもよると思っています。

 

 この3月19日に投稿した阿南友亮著「中国はなぜ 軍拡を広げるのか」の中で、氏は「日中関係をどのように捉えるかという問題は、個々人の情報量、情報の入手経路、情報を整理・解釈する際の鋳型となる価値観などによって大きく左右される」と述べられております。そのことは日中関係のみならず、多くの事象に当てはまることではないでしょうか。自戒をも込めて感じたところです。

 

 上に写した著書は日本政治史の泰斗である井上寿一氏、ハーバード他で学ばれたアメリカ研究、文化政策論を専門とする渡辺靖氏、加えて、気鋭の民俗学・近現代東アジアの思想を専門とする室井康成氏によるものです。この三冊は相互に関係があるわけではありませんが、手元に置きました。又、海外事情(2019.3・4)は習近平の国家戦略の特集で、極めて興味深い論考集です。近いうちに感想など記して見たいと思っております。

 

 ここ半年ばかりは、日韓、日中、及び日米開戦・戦後との視点から投稿して参りました。そこに私なりに加えてきたことは、メデイアの有り様、かっての知識人から専門家と称される人々のメデイアにおける、その現状。そして、それに大きく影響を受けると思われる世論と称するものについての感想です。私は言論の自由報道の自由は勿論、極めて重要なものと考えております。只、報道しない自由を含め、歯止めのなくなってしまった報道の自由言論の自由とは何をもたらすのか。メデイアを掣肘するものが無くなってしまったように私には映るのです。むしろ最大の権力を握ってしまったのがマスメデイアなのではないでしょうか。そこには正義とは何か、民主主義、更には民主主義のはらむ問題とは何か、そうした観点が抜け去り、何か商業的観点のみが目立つように私には映るのです。それはポピュリズムとは少々異なる、日本独特の現象なのではないでしょうか。

 

 何故なのでしょうか。他国にあって日本にはないもの、それは日本語が全て通じることに加え、宗教という問題なのかもしれません。宗教を弾圧する中国共産党独裁政権がある一方、日本には弾圧の対象たる宗教、人の心を規制する宗教心が、そもそもなくなっているのではないでしょうか。良いかどうかは又別の問題となりますが、欧米を含め、絶対神と言う概念がある一方で、人の心を規制する神という概念が乏しい、否、無神論がごく当然の如くの日本は、特異な国なのかもしれないと思うのです。

 

 全く個人的な体験ですが、母方がカトリック教徒の一族で、私も幼い時から教会へ通っておりました。公教要理の仲間の一人は神父の道に進みました。私も神父様からも期待されていたようですが、高校時代に亀井勝一郎の「生けるユダ(シエストフ論)」に接し、それがひとつの要因でしょうか、教会から離れていきました。その後、私が普通の神前結婚式を挙げることとなりました。その前に、私としては母親を安心させる為か、教会でも式を挙げるべく、式の一週間前に家内と本所カトリック教会の司祭館を訪れ、神父様に式のお願いを致しました。司祭館の屋根を雨が強く打つ10月の土曜日の昼でしたが、神父様より「昌章、帰ってきたか」とのお言葉を頂きました。そして、一週間後の土曜日、私と家内、母、及び代理父母のもとで結婚式をおこなって頂きました。その式の直前に神父様より式前に「告解」をと言われ、告解部屋に入りました。そのとき何を告解すべきか分からない、罪の意識が私の内部から消えている自分を見たのです。しどろもどろ告解が始まり、神父様より最後には「ご安心なさい」とのお言葉を頂き、告解部屋を出て、キリストの十字架に向かい跪き、言われたお祈りを唱えました。そのときの安堵した私と、そうした一連の情景を今でも思い起こします。只、その後、50数年になりますが教会には行かず、否行けず、今日に至っております。

 

 そんな個人的なこともあるのでしょうか、カトリック遠藤周作、最後はカトリックからプロテスタントに改宗した、「戦艦大和の最後」等を出された日銀の吉田満。加えて、山本学とも称される、山本七平の作品を身近に置いているのかもしれません。

 

 以下は宣伝となり恐縮しますが、現在の弊ブログ「淸宮書房」の順位をご紹介いたします。それぞれが長く、恐縮したしますが、ご一覧頂ければ幸いです。

 

注目記事の紹介

 

 僭越至極というか何か複雑な想いを持ちながら、投稿を続けております。お陰様で、弊ブログ「淸宮書房」へのアクセスは29,000に近づいておりますが、ここ数ヶ月で、その注目記事と称される順位が大きく変動しております。

 

 その中で、2015年18日に投稿した2014年10月に発刊の木村幹著「日韓歴史認識問題とは何か・・歴史教科書『慰安婦』、ポピュリズム」が第二位に復活してきております。私としては、2018年1月18日に続き、2019年2月18日に加筆をしております。なお、本書は日韓歴史共同研究に関与された木村幹氏による、日韓の歴史認識問題を根本から問い直す研究成果です。戦後70年の日韓双方の現代史を敷衍しながら、両国の政治過程並びに世論の推移を分析していく、見事な論理構成。加えて、マスメデイアに対してはやや論調を抑えながらも、人を引き込む緊張感を持った文章で歴史認識の本質を解き明かし、その解決をも示唆したものです。

 

 そして、第三位に挙げられたのは、2018年5月14日に投稿した佐伯啓思著「『保守』のゆくえ」を読んで思うこと」です。「保守」とは何かを問うものです。元来、保守主義はイギリスに誕生したもので、自由の実現を無条件に肯定し、化学や技術革新を盲進し、その力によって社会を急激に変革することを求める「進歩主義」に対抗する思想であった、とのことです。そして、八つの保守思想の基本的論点を挙げ、

 

 現実は大方の政治家も知識人も「暗黙の植民地化」を歓迎した。保守派の政治家はどこか躊躇しつつも、日米同盟こそが日本の国益だと自らを納得させた。一方、進歩的知識人は、日本がアメリカの準植民地であることなど全くふれもせずに平和と民主の戦後日本を賞賛して、フエイク・ニュースの方棒を担いだ。その知識人も今や、何をすればよいのか、誰も確信をもって述べることはできない。その知識人に代わって、各種の「専門家」と称する人々が登場し、政治の場面(マスメデイアを含め)で「専門知識」を披瀝する現状である。そこには、近代を生み出した「個人の内面」への希求はもはやない。われわれは、改めて、日本のたどった「近代のデイレンマ」へと目を凝らし、近代化やグローバル化のなかにおける「日本人であること」の意味と葛藤を問い直すほかないだろう、と述べています。

 

 なお、1位はこの三月に投稿したものですが、2位以下とも重複しますので省略します。4位は今年の3月、5位は今年1月に投稿したものです。

1.ここ数ヶ月を省みて(2019.2.3)

  http://kiyomiya-masaaki.hatenablog.com/archive/2019/02/03

ここ数ヶ月を省みて はじめに 「反日・反米・親北」で名前を売った盧武鉉元大統領の側近であった、現文在寅大統領の登場で、日韓の関係は最悪の状況になりました。私は予想はしていたとは言え、日本は極めて難しい状況に置かれている、考えております。韓国の現政権にどういう破局が訪れるかはわかりませんが、日本との接点をほとんど持たない文在寅大統領が続く限り、日韓関係の改善はないでしょう。それを前提にして、日本は今後を考えていくこと、ひとつの重大な岐路にあるということではないでしょうか。方や、日本には半島出身の方々が、日本の国会議員等を含め政治的権力をも持っている現状です。その上、そうした方々の人口は減ることは・・・

 

2.再・木村幹著「日韓歴史認識問題とは何か・・歴史教科書・『慰安婦』、ポピュリズム](2015.3.18)

  http://kiyomiya-masaaki.hatenablog.com/entry/2015/03/18/140619

再投稿にあたって・・追記 韓国内外に亘って、日を追う毎に高まる韓国の官民挙げての反日行動・発言は止まることはなく、むしろ強まっていると思います。この2月10日、韓国国会議長の、その位置づけ、その立場に関しては、私はよく分かりませんが、慰安婦問題に関して「天皇陛下が謝罪すべき」との報道が日経新聞等でされました。その後の韓国政府の動向に鑑みても、韓国の反日・敵視感情はここまで来たか、との思いは不快を通り越し、強い嫌悪感を持つに至りました。 戦後74年の日本の歩みとは一体何だったのか。新憲法の下、大きく変わった象徴天皇。特に現天皇皇后陛下は皇太子・皇太子妃時代からの火焔瓶を投げられた沖縄慰霊の・・・


3.佐伯啓思著『「保守」のゆくえ』を読んで思うこと
(2018.5.14)

  http://kiyomiya-masaaki.hatenablog.com/archive/2018/05/14

佐伯啓思著『「保守」のゆくえ』を読んで思うこと まえがき ここのところ、個人的事象につき、数本の投稿をしてきました。今回は本来の軌道に戻り、読書後の私の感想など記して参ります。 佐伯啓思氏の著作については、今まで「淸宮書房」で「日本の愛国心」、「反民主議論」、「アメリカ二ズムの終焉」、「現代民主主義の病理」、「西田幾多郎 無私の思想と日本人」を取り上げてきました。掲題の「保守のゆくえ」は氏の『「脱」戦後のすすめ』に続く後編ともいうべき著作です。今年1月21日に自裁された氏の永年の友人である西部邁の「保守の精神」をできるだけ継承したいとの思いで書かれたとのことです。私としては、佐伯氏に僭越・・・

 

4.阿南友亮著「中国はなぜ 軍拡を続けるのか」他を読んで(2019.3.16)

    http://kiyomiya-masaaki.hatenablog.com/archive/2019/03/16

阿南友亮著「中国はなぜ 軍拡を続けるのか」他を読んで はじめに 2019年3月2日の日経新聞の「米、WTO改革で提案」に記事によれば、スイスのジュネーで2月28日に開かれた世界貿易機構(WTO)の一般理事会で米国が中国などを念頭に、経済発展を遂げた国は「発展途上国」としての恩恵を受けられなくする規定の導入を提案したとのこと。仮に中国が途上国でなくなれば通商交渉での立ち位置は大きく変わり、中国は反対しているようです。「月の裏側にロケットを飛ばした国を誰が途上国とみなすだろうか」と米国代表は中国を皮肉ったようです。方や、中国の習近平国家主席は2018年11月、パプアニューギニアで開かれた太平洋経済・・・


5.牧野邦昭「経済学者たちの日米開戦」を読んで
(2019.1.7)

   http://kiyomiya-masaaki.hatenablog.com/archive/2019/01/07

牧野邦昭著「経済学者たちの日米開戦」を読んで はじめに かって、私が参加していた某読書会の慶大経済学卒の畏友・堀口正夫氏より、昨年11月、次の文面が届きました。 昭和15年1月、秋丸次郎陸軍中佐を中心とした調査部が設立された。俗に「秋丸機関」と呼ばれ経済戦の調査研究を目的とし、有沢広巳、中山伊知郎、竹村忠雄,佐藤弘、近藤康男、大川一司、森田優三等多くの学者が集められ、英米班、ドイツ班、ソ連班、日本班に分かれて、経済力、抗戦力の調査を行った。 小生が大学3年生のとき、「原論特殊講義」という外部からの講師を招いて行われる科目があった。その中の一つとして「現代経済論」という、竹村忠雄氏の講座があった・・・

 

 2019328

                             淸宮昌章